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ある旅立ち

11月22日いい夫婦の日に静岡の父が亡くなりました。肉親の死を書くことは重くならないかと考えましたが、93歳の天寿を全うし逝けたことは祝福してもよいことと思い敢えてアップすることにしました。前日入所して2ヶ月の介護施設から病院に運ばれて、駆けつけた母や姉に大丈夫だから気をつけて帰るようにと言っていた矢先のことであっという間でした。直接には肺炎から心不全ということですが、すべての機能が終わりに向かった老衰と解釈しています。漆工芸という仕事をしてかなりの歳まで現役で手先を使っていたためかボケることなく会話もできていました。葬儀も近親者とお世話になったご近所だけで決してあちこちに知らせないようにとの本人の希望で内々にとり行いました。

私は三人兄弟の末っ子で、決して綺麗とは言えない雑然とした工房から深みのある美しい漆工芸品が産みだされていくのが面白く不思議でした。20代の頃父の知り合いだった鎌倉彫の先生に教えていただくために数年間鎌倉に通っていたこともあります。私が彫り父が塗った物が市の工芸展で市長賞をいただき地元新聞に写真入りで掲載された時には嬉しそうでしたが、私はといえば父の名前と塗りの良さで受賞したのだろうと醒めたものでした。

私が彫り父が塗ってくれた物のいくつかは今でも日常生活で使っています。

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牡丹唐草の合わせ鏡は鎌倉彫に多い乾口塗り

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老梅を図案化した硯箱は朱漆で華やかに、父娘のコラボ作品です。

誉められると何でも気前よく人に差し上げてしまうのを気遣った母から持っていくよう言われて手元にあるいくつかの作品を写真に撮りました。なんちゃってデシガメで色や質感など実物にははるかに及ばないものですがアップします。

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錫梨地の二段重、金を使うより美しいと言われる錫梨地は父の得意とした塗りです。

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上の2点は乾漆といって和紙を幾重にも重ねて形づくり、下塗り⇒砥ぎ出し⇒中塗り⇒砥ぎ出し⇒上塗り⇒砥ぎ出しの工程を繰り返しできた物、尺二寸と大きめなのは伝統工芸展などの出品作として作ったからです。3点目は呂色漆の塗り分け、4点目左は乾漆で螺鈿を配した変わり塗りの菓子器です。市に寄贈した物もあり、これはほんの一部ですが色褪せることなく深みのある美しい器たちです。

最後に逢ったのは介護施設にお見舞いに行った時、ロビーで車椅子に座ってお茶をしていました。帰り際また来るからねと握った手の指は永年使い込んだのにも関わらず長く、びっくりするほどしなやかでした。思えばいつも見ていたのは動いている父の指でした。

昨日25日晩秋の青空の下、永く充分に生きたその人は旅立って逝きました。お疲れさまでした、そしてありがとう。

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

そうでしたか
生きていることに、改めて終わりはあるんだなぁ〜とボクは感傷的になります。
それにしても、素敵な作品たちです。

御冥福をお祈りします。

気をつけて、天国にいってらっしゃ〜い。

投稿: のぶじい | 2011年11月26日 (土) 17時55分

のぶじいさん

ありがとうございます。
名誉欲などはなく多趣味で器用な人でした。不思議なことに悲しいとは感じずに送ることができました。

命には限りがあり、死なない人はいない、せめて悔いなく生きたいものですねconfident

投稿: kattiiかあさん | 2011年11月26日 (土) 19時01分

すっかりご無沙汰しておりました。

お父様、大往生されたんですね。
立派な作品をたくさん残されて・・・kattiiかあさんの器用さや創作縁はお父様に良く似ていらっしゃるんですね。

親は先に逝くもの・・・とはわかっていますが、その時に後悔しないよう、
私も過ごしたいなと思います。
お父様のご冥福をお祈りいたします。

投稿: ぐっち | 2011年11月27日 (日) 07時06分

ぐっちさん

ありがとうございます。
犬好きでこどもの頃には犬を飼っていましたからkattiiを連れていくと「よく来たなぁ」と言って可愛がってくれました。

ワンたちを連れての通夜、告別式だったので急きょキャンピングトレーラーを引っ張っていきお寺の広い駐車場に泊まりました。
通夜の夜は一晩近くに・・・相変わらず面白い娘だと笑っていたかもしれませんconfident

投稿: kattiiかあさん | 2011年11月27日 (日) 08時32分

こんばんは、
お父さんの残された品々、本当に素敵ですね。ひかえ目でありながら、1点1点異なる輝きを持っています。
私も最近大切な友人を亡くしましたが、彼の使っていた品々を見ていると、良い思い出が蘇ります。
お父様のご冥福をお祈りいたします。

投稿: タケジ | 2011年11月27日 (日) 20時18分

タケジさん

ありがとうございます。
沼田のログのご友人ですね、多才、多趣味の素敵な方shineでいらしたとか・・・

今日はお近くでキャンプをされていたそうで、とうさんたら昨夜分かっていたらお酒beerwineの差し入れに行ったのにとしきりに残念がっておりました。
次回は是非・・・

投稿: kattiiかあさん | 2011年11月27日 (日) 20時40分

魂は子に引き継がれてますよね…父君のご冥福をお祈りいたしますm(__)m

投稿: kabu | 2011年11月27日 (日) 23時53分

kabuさん

ありがとうございます。
子どもの頃、口止めすると絶対口を割らない子だからと父が遊びに行く時お供に連れて行かれたものです。
bottlesmokingも好きだったので古い肉体から解き放たれて今頃は・・・confident

投稿: kattiiかあさん | 2011年11月28日 (月) 08時02分

お父様の容態は気になっていたのですが・・
漆工芸品は触れたことがありませんが大切に扱えば親から子、子から孫にと何世代にも引継がれたらこれ以上の職人名利はないと思います。
お父様のご冥福をお祈りいたします。

投稿: すーさん | 2011年11月29日 (火) 00時55分

すーさん

ありがとうございます。
「漆」は海外では「JAPAN」と呼ばれているそうです。優れた塗料であると共に接着剤として金接ぎなど陶器の修復にも使えたり・・・
創りだした多くのものは残っていきますねconfident

投稿: kattiiかあさん | 2011年11月29日 (火) 07時22分

気にはしていましたが残念でしたね。お父様の作品が沢山残っていて、良かったですね。以前少し拝見させていただきましたがあまりに素晴らしく指紋が付きそうで触れなかったのを思い出しました。いつまでも大切にしてください。
ご冥福をお祈りします。

投稿: Megママ | 2011年11月30日 (水) 07時45分

Megママさん

ありがとうございます。
90歳を超える長寿を祝う風習でお香典返しに5円玉をお目出度い袋に入れて添えました。生き切ったという意味では祝福できることだと思っています。
創ったものは残り続けますから幸せな人ですconfident

投稿: kattiiかあさん | 2011年11月30日 (水) 17時06分

こんばんわ。
ほとんど毎日のブログが3日お休みでしたので、体調が悪いのかしらと思っておりました。そうですか。ご長寿でしたね、でも子はもう少しもう少しと思うものですよね。ブログ拝見しているとすっかり心の整理がつかれたご様子、少しはホットしました。
お父様の作品を初めて拝見させていただきましたが、すばらしいです!漆の輝きは実物に及ばないとは思いますが、美しいですね!
本当に作品は残りますね。残るものを私も作れたらいいのですが。
是非実物を拝見させてくださいね。
お父様のご冥福をお祈りしております。

投稿: 幸仙 | 2011年11月30日 (水) 23時24分

幸仙さん

ありがとうございます。
父についてはなかなかユニークなエピソードがいくつも・・・壮年期は有島一郎さんという俳優さんによく似ていましたが、かわいいジイちゃんになって・・・90歳以上だと会う人には自慢していましたconfident

投稿: kattiiかあさん | 2011年12月 1日 (木) 08時14分

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